2018年10月31日投稿 → 2021年5月15日更新

いつもお読み頂きありがとうございます。

今回は、当ブログ宛てに質問を頂きましたので答えていきたいと思います。(返信先がわからないので記事にさせていただきました。)

※いきなり答えが見たい場合には「筆者の見解について」をクリックしてください。

◇◇ もくじ ◇◇ 

■質問の内容(要旨)について
■ホームインスペクションについて
■建築士の行う工事監理(監理業務)について
■界隈のインスペクションの状況について
■筆者の見解について




質問の要旨については、タマホームの新築にあたりホームインスペクションの導入を検討しているとのこです。これについて、

・ホームインスペクションはそもそも必要か?
・セルフチェックは可能なのか?
・必ずチェックすべきポイント(箇所)はあるか?
・インスペクション(の是非)についてどう思うか?


まとめると以上のような内容についての質問です。

正直これについては、いきなり一問一答では言葉足らずの内容になって語弊を招いてしまう可能性があるので総合的な見解として回答していきたいと思います。



まず質問を整理するためにホームインスペクションとは何なのかについて書いていきたいと思います。

ホームインスペクションについては、厳密にいうと法令的な制限がありません。

ただし、国(国土交通省)においては、既存住宅の現況検査の方法やサービス提供の適正な業務実施について、消費者保護と適正取引を目的に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定しています。

また、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会においては、「当協会が「ホームインスペクション」と呼んでいるのは、消費者が主に中古住宅を売買する前に、主に目視で住宅のコンディションを把握して報告する、という業務です。比較的短時間で、可能な範囲で行う「一次診断」です。これは病院に例えるなら、「健康診断」のレベルといってよいでしょう。」と見解を示しています。(HPから抜粋)

つまり本質的には、既に出来上がっている建物(既存住宅、中古住宅)の診断が起源であり、そこから新築時の診断(検査)に派生しているものではないかと思われます。

料金については、簡単な目視中心の検査で数万円、機器類を使うさらに十万円台の料金がかかるるようです。

また、派生した業務については(一部を除き)サービスの提供も名称についてもあくまで法の制限が無い状態です。
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※国土交通省HPよりお借りしました。



実は、設計図書のとおりに工事が行われているかどうか確認する作業については、「工事監理」という用語と内容が法律で定義され、建物種類や規模に応じて、建築士(一級・二級・木造)でなければできないとされています。

また、その業務には、工事が設計図書のとおり行われていない場合には、指摘したり修正を求めたりできます。また業務の完了時には指定の様式で施主に報告する義務も定められています。

以下法律(建築士法)の抜粋です。

第2条第1項第8号 この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。

第3条 左の各号に掲げる建築物を新築する場合においては、一級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。<以下省略>

第3条の2 前条第一項各号に掲げる建築物以外の建築物で、次の各号に掲げるものを新築する場合においては、一級建築士又は二級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。<以下省略>

第3条の3 前条第一項第二号に掲げる建築物以外の木造の建築物で、延べ面積が百平方メートルを超えるものを新築する場合においては、一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。<以下省略>


第18条第1項第3号 建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。

第20条第1項第3号 建築士は、工事監理を終了したときは、直ちに、国土交通省令で定めるところにより、その結果を文書で建築主に報告しなければならない。


一般に建築士が監理のみを行う場合には、資格内容や経験年数などによって誤差はありますが、一般住宅では、基本料金のみで建物建築価格の3%~5%の料金が発生します。設計と監理が一式になっていると合わせて10%前後の費用が必要になります。



参考までに公益社団法人日本建築士会連合会とNPO法人日本ホームインスペクターズ協会が認定しているインスペクターは、次のリンクから確認できます。

公益社団法人日本建築士会連合会は、建築士会インスペクター登録者として都道府県別に全て公表しています。→ https://kenchikushikai-cpd.jp/inspector/

NPO法人日本ホームインスペクターズ協会においてもホームインスペクター(住宅診断士)を検索することができます。→ https://www.jshi.org/search/

ちなみに、これ(リンク先)をみると多くの人が建築士のようです。

最近では、既存住宅調査技術者という建築士のみに与えられる資格で、平成30年4月の宅地建物取引業法の改正により、中古住宅の売買の際に行われる重要事項説明に、既存住宅状況調査を実施している場合にはその結果について説明することが義務づけられました。(あくまで調査を行った場合です。)

この調査は、既存住宅状況調査技術者の資格を持つ者のみとなっており、従来のインスペクターの資格では行うことができないものとなっています。



以上の(長々とした・・)説明からこう考えます。


ホームインスペクションはそもそも必要か?」という質問について建築の行うインスペクションという条件付きで必要だと考えます。(逆に建築士資格を持たないインスペクションであるならば新築時には不要だと思います。)

理由は図で説明します。

下の図は、通常行われる契約~工事までの体制です。(タマホーム=THを例にしています。)
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この体制だと、施主側が建築にまったく無知な状態であるときにチェック機能が働きにくいです。

これを第三者の立場でインスペクション(建築士)を行うとすると、下の図のような体制になります。
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これによって、タマホーム側に対し
チェック機能が働きやすい です。



セルフチェックは可能なのか?」という質問については、(ある程度まで)可能だと考えます。

理由:正直な話をいうと建築士でも全てを知っているわけではありません。木造が得意な建築士でも鉄筋コンクリートになると苦手ということもありますし、その逆もあります。また、デザイン(意匠)得意な建築でも構造になると苦手ということもあります。

得意不得意がある中で、色々な人の「」で見ることが意外と重要になってきます。

なので、「ある程度」まで可能ですし、むしろセルフチェックは必要です。

しかし、セルフチェックで全てをカバーするのは無理だと思いますし、建築士でも見落としたり間違えることがありますのでそのあたりを認識することが、決断のポイントになると思います。

以前施主の取り組みについて記事にしています。




必ずチェックすべきポイント(箇所)はあるか?」という質問については、ポイントが多すぎるために限定列挙できないですがこれだけは断言できます。

担当者(営業・工務)の誠意をチェックしましょう!

これは言い切れます。


インスペクション(の是非)についてどう思うか?」については、制度的にしっかりと確立されていれば、積極的に利用していいと思っています。

現在の状況では、業務がどんどん派生していって自身でもホームインスペクションと工事監理の関係において、特に新築施工時の評価について明確には判断できない状態です。

ただ、料金的には建築士が行う工事監理より廉価で、個人的にはなにかオプションをひとつあきらめてでも、利用していいのではないかと思います。

これは、施工の制度がハウスメーカーに由来するのではなく、施工担当者や下請けなどの「」の誠意(姿勢)に由来してしまうことにも原因があるからです。

以前記事にしています。


他人の「目」があることで、人は緊張感やいい意味でプレッシャーを感じます。

この緊張感が施工の精度を良い方向に変える一因になっていると思っています。


以上が見解(回答)になりますが、あくまで個人の意見で書いています。基本的には、どのハウスメーカーもインスペクションは利用しなくてもしっかりとした家ができるようシステム化されていますので、過度な心配は無用です。

予算や建築主の都合で保険として利用するといった程度で判断すればいいと思います。



質問に対する見解は個人の参考意見として書かせていただきましたので、最終的にはご自身の判断と責任で決定していただくことをご承知おきください。


今回はご質問をいただきありがとうございました。

自身でも制度を考える良い機会をあたえていただきましたことに感謝しています。

家づくりの疑問についてこの程度の回答でよろしければ気軽に送信フォームかツイッターDMからどうぞ。


では、良い家づくりを。



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